信じるものの教義を唯一のものとするのではなく、世界の多様性をそのまま具現化したかのような、あるがままに咲き乱れる神々の世界。
そこには教訓や社会的な規範の暗喩があるわけでなく、ただ欲望のままに生きる力強い神々の生命が、輝きを失わなず人の心を掴んで離さない大地、インド。
夢と現、そして聖と俗。並行するはずの世界が交差する特異な世界の旅。

進路は南へ。
カルナータカ、そしてケララ。アラビア海に面した二つの州。
ガンジスやヒマラヤから遠く離れた、最果ての地で開花するもう一つのインド。

特に太陽が沈んだ後、夜の奥から感じた熱とゆらぎ、そして闇の中になぜか感じる彩り。
モンスーンの恵みから生まれた鬱蒼とした暗闇の奥で交差する神と人。

歌舞劇ヤクシャガーナは夜から夜へ旅を続け、人々に娯楽と信仰の権威を。
そして宗教儀礼テイヤムは自らの中に神々を宿すことで感謝と畏敬の念を。
干渉し合えるはずのない二つの世界に繋がりを生み出し、人間界には存在しないような躍動と彩りで確かな存在感を示す二つの夜。
それは僕の暮らす日常では想像することもなかった世界であると同時に、森羅万象に畏敬を感じ、我々は何か大きな存在の恩恵、あるいは気まぐれの元に生かされている感じる感覚。
我々の遠い記憶、遥か祖先が自然の中で感じて受け継がれてきた想いでもあるように思え、漂うようなうたた寝で感じるような、どこか懐かしい気持ちで境界線の宴を眺め続けました。

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